フリートーク5

非拘束名簿方式について


 え〜と、再びやや毒気味。ちなみにこれを書いてるのは2001年7月16日。新世紀最初の国政選挙である参院選の直前であり、また、最初に比例代表制の方式に『非拘束名簿方式』なるものが導入される選挙が行われる直前、ともいえます。

 さて。
 この『非拘束名簿方式』という代物。どんなものか名前で想像つく人はあまりいないと思います。まあテレビや新聞で色々言われているので、知ってるとは思うんですが、一応簡単に説明しましょう。
 この制度は、比例代表制の投票方式です。比例代表制というのは、各政党が獲得した票数の比率(この比率の算出方法には色々あったと思いますがここでは割愛します。忘れたとも言いますが(^^;)に基づいて、政党が議席を獲得する、というもの。そして、その際の当選者は、予め各政党が選挙管理委員に提出した名簿の順番に当選することになります。つまり、有権者は個人ではなく政党を基準に投票する、という意味で、より政策重視の投票が行われる、というものです。
 で。
 今回導入された『非登録名簿方式』はこれが政党名ではなく、各政党が提出した名簿に載っている個人名でも投票できる、というものです。どういうことかというと、たとえば(政党名は匿名にする意味がないので匿名にしません)自民党がA、B、Cという3人の候補者を名簿に載せていたとしましょう。この場合、有権者は従来どおり投票用紙に「自民党(自由民主党)」と書いてもあるいはA、B、Cのどれかの名前を書いても自民党に投票したことになります。ただここで、従来の方式と違うのは、仮に名簿順はA、B、Cという順番だったとしても、A氏よりC氏の方が個人名でたくさん投票されていて、かつ自民党の獲得議席数が1であった場合、当選するのはA氏ではなくC氏ということになるのです。つまり、比例代表制でありながら、個人を選ぶことが出来る、というものなのです。
 これは、考え様によっては全国区の投票選挙、ということが出来ますから、決して悪い制度ではありません。特に、地元ではないすぐれた人材に投票できる、といったメリットもあり、特に政治に対して関心の非常に高い国では、より民意にそった選挙が行われることとなるでしょう。
 ええ。あくまで政治に関心の非常に高い国ならばね。
 さて。日本はお世辞にも政治に関心が高いとはいえません。というよりは、むちゃくちゃ低いです。ええ、あきれるほどに。
 で、今回のこの『非拘束名簿方式』導入に対して、各党が選挙戦で展開してる手段は、というと。まあわかるとは思いますが、いわゆるタレント候補者の擁立です。これまで政治に欠片も参画したことないような人物が、自民党とかの推薦で今回の比例代表の名簿には記載されているんです。無論、彼らが政治に対して実は熱意を持って参加しているのかもしれませんよ。だとしても、少なくとも擁立した側の意図は明らかです。一例をあげれば、有名な某プロレスラーが出馬していますが、プロレス雑誌とかで「比例代表は俺の名前を書いてくれ」なんて言って御覧なさい。その雑誌を読んだ有権者のうち、普段選挙にも行かないような人でも、投票に行くかもしれません。その分はそっくり、その政党の丸儲け、となるわけです。そこには、政策、政治的ビジョンで候補者を選ぶ、などという意識は介在することはないでしょう。果たしてこれがまともな選挙といえるのでしょうか?
 さらに今回、もっとあきれて、かつ選挙法違反じゃないか、とすら言いたくなったことが。
 この参院選より先駆けて行われた東京都議選、実は数多くの無効票が存在したそうです。書かれていたのは『小泉』の二文字。つまり、何も知らない、はっきり言わせていただければ選挙なんておそらくこれまでに行ったこともなく、そしてまともに政見放送もみなければ、おそらく立候補者が誰であるかも知らないような人が、多分そう書いたのでしょうね。ただ、都議選では当然これは無効票でした。
 ところが。
 今回自民党の名簿にはいるのです。「小泉」という名前の、しかし小泉総理とは全くの別人の候補者が。
 で、投票用紙に何も知らずに「小泉」と書いてしまう無知な候補者がいたとしましょう。そうすると、それは全てその別の小泉氏の得票となるのです。で、それでとまればまだよし。その投票は、あくまで比例代表制度の投票です。従って、個人が何票獲得したかが問題ではなく、まずは政党が何票獲得したか、が問題になります。個人の得票の大小で当選順位が決まるのは、その後です。つまり、自民党からしてみたら、何も知らない、よく分かってない無知な(あえてこの言葉を使わせていただきます)有権者の票を「小泉」という名前だけで吸い上げて自分達の勢力を伸ばそうとしているのです。はっきりいって、馬鹿にしすぎてません?この制度。そりゃ、もちろん一番馬鹿なのはそれで何も考えずに「小泉」と書いてしまう人たちですよ。いや、もちろん本当にその小泉氏を推薦する人は構いませんよ。どっかの寺の住職だったかの人なので、あるいは檀家の方々はホントにその人に投票する人もいるでしょうし。けど、大半の、何も考えずに小泉総理に期待してるから、という意味で書いた「小泉」という投票は、全く無関係の人への投票となるのです。いや、もちろん自民党の票にはなるから、無意味ではないのかもしれませんが、それにしてもこれが仮にも先進国を自称する国の選挙でしょうか?
 さらに付け加えるなら、もっと酷い話があります。
 今回の名簿には「田中」という人が二人いるそうです。で……何も考えずに「田中」とフルネームを書かずに名字だけ書く人がいたとしたら。なんと信じられないことに、その票はその二人の田中で分け合うというのです。はい?なんですかそれは?有権者を馬鹿にしてますか?冗談やギャグとしてはよく出来てると思いますけどね、これ、全然、全く冗談じゃないんですよね
 とりあえず……あとで首相官邸のホームページにでも文句言いに行こうかと思ってます。
 非拘束名簿方式の人名による投票は姓名両方をきっちり(ひらがなでもいいから)記載したもののみを有効とするように、と。はっきりいって異常ですよ、これは。これでよく、いつぞやカンボジアの選挙を監視したり出来たものですね。選挙制度の運用はともかく、その中身においては、世界最低ランクじゃないですか、この国の政府は。まさか自国民の政治に対する低関心を、こんな形で利用されるとは思いませんでしたよ。導入時から言われてはいましたが、まさかここまで馬鹿な選挙戦略とってくるとは到底想像できませんでしたものねえ(苦笑)

 確かにこの、『非拘束名簿方式』というのは、国民が政治に関心の高い国ならば、かなり有効な方法であるのは確かです。より、民意にそった候補者が当選するように出来るシステムですから。しかし、それを日本に当てはめるのは論外も甚だしいでしょう。一体この国の政治家は、国民を、有権者をどこまで馬鹿にすれば気がすむのでしょうか?
 なに?そんなつもりはない?そんなこと誰が信じますか?
 国民の、政治に対する不信感をここまで深めたのは一体誰か、それをもう一度よく考えてもらいたいですね。今回の一件は、その不信感をさらに強める結果になっただけですから。こんな手を使う時点で、はっきりいって今の小泉政権も、結局自民党なんだな、と強く思いましたよ、私はね。


戻る