こちらのサイトで、中世ヨーロッパの軍隊の規模見てちょっと考えてみまして。一体、FE世界の軍隊の規模はどのくらいなんだろうか、と。
まず、ユグドラル大陸ですが、ここの広さはなんだったかで、大体ヨーロッパと同じくらい、と言うのを見た事があります。まあヨーロッパといっても、この場合西欧だと思いますが、それでも結構広いです。セリスたちの戦いは一年くらい続いてたそうですから、そこから考えても(セリスたちは常に移動しつつ戦ってましたから)狭いはずはなく、ヨーロッパくらい、というのは妥当だと思います。その他の大陸についても、どれもほぼ同じ大きさと考えて、おそらく差し支えないでしょう。
さて。ではこの広い各大陸にどのくらい都市が存在しているかと言うと……ゲーム上ではかなり少ない。けどまあ、実際の都市の数がそれほど少ないはずはなく、実際はたくさん存在はしているんだと思います。
で、こちらによると、中世ヨーロッパ(大航海時代より前)というのは、常備軍と呼べるものは、日本人が考えるより遥かに少なかった事が記載されてます。日本では、戦国武将でも万単位の軍を率いる事が出来てましたが、西欧ではよくて一千人。この差はどこから来るのか、といえば、単純に兵員の維持能力……つまり、兵糧です。西欧の主食である小麦に対して、日本の主食である米は、その収穫量の差が余りにも大きいようで(五倍以上の差がある)、つまり、農民が兵士を維持する事が可能なんですね。まあ戦国時代は農民が足軽として軍人になってた時期でもありますし。
では西欧の軍隊は何が中核だったか、というと傭兵だそうです(特にイタリア)。んで、ふと思うのは、FEにおいても実は傭兵は非常に多く登場しています。紋章の謎のタリスは、オグマの傭兵団を雇ってました。というかあそこは騎士(この場合はむしろ常備軍と同義と考えて良さそう)すらいません。
聖戦においても、ホリンは傭兵ですし、ベオウルフやアレスは傭兵団として国に雇われています。また、トラキアの竜騎士に至っては、騎士団全員が傭兵として雇われて、それで国を維持しています。どっかのサイトに傭兵稼業だけで国を維持できるはずは、というのを見た事があるのですが……実はこれ、可能っぽいんですよ。というのも、中世の傭兵団というのは、一種移動国家のような存在だったようです。
そもそも徴兵制というのが出てきたのは、領土型大規模国家が登場してからで、それ以前の都市型国家の軍人と言えば、本当にごくわずかの兵士(警察に近い)と、あとは傭兵です。まあそもそも『騎士』という存在の定義にもかかわるのですが、現実の騎士や傭兵について記述してるときりがないので割愛します。ぶっちゃけ、こちらをご覧下さい。
とりあえずここでは架空世界であるFEの各大陸がどうであったか、ということで。
まず、いくらなんでもゲームキャラと同じ数ということはないでしょう。そんな数十人でヨーロッパ全土を左右する戦いをするはずはないですから。
そもそも国の人口がどれほどだったのか、というのも分からないんですが、こちらによると、十二世紀のフランス(フィリップ尊厳王)の場合で、人口は約千五百万人。ところが、常備軍はなんと千五百人もいなかったそうです。ちなみにこのうち騎士と呼ばれる存在は三百程度、従騎士がほぼ同数、残りが通常兵力(兵糧輸送兵含む)。ただしこれには諸侯の軍勢は入っていませ。でも諸侯も全部全部入れても一万もいきません(非常呼集の民兵含めても)。ちなみに東洋では、同時期に万どころか、時には十万を超える軍勢を運用できたのはよく知られている事でしょう。中国では百万単位で運用してますね。ところがこれでも、当時のヨーロッパとしては最大規模だそうです。
常備軍の規模と言うのはこの程度だったんです。
では、FE世界の軍隊はどうか、というと……大差ない気がします。時代的にはもうちょっと下るでしょうが、一桁上がるほどではないでしょう。つまり、各国の持つ軍勢と言うのは、せいぜい数百から一千程度、と。ちなみに十字軍は合計すると十万人近いのですが、その実態は、というと戦闘技術を持たない女子供や神職も大分含まれていて、あとは大半が傭兵だったようです。
つまり、傭兵というのは、軍隊の中核を成す存在であり、また、戦争には欠かせない存在だったわけです。
実際、FEのゲームでいうと、タリス王がマルスに貸し与えたのは正規軍ではなく、オグマの傭兵団でした。聖戦のアグストリア内戦では、傭兵団が各王に雇われています。また、ダーナもジャバローの傭兵団を雇ってましたね。封印の剣でもロイの援軍としてきたのはディークら傭兵でした。蒼炎では、そもそも主人公が傭兵です。
傭兵を雇うとお金がかかる、と思いがちですが、傭兵と言うのは言うまでもなく戦闘のプロです。そしてプロを育成するにはお金と時間がかかります。必要な時だけ戦闘のプロを必要とする場合、傭兵の方が遥かに安く上がるんですよ。この辺りは現代のほうが顕著ですが。無論傭兵側も、お金を払ってくれる限りは(そうそう)裏切りません。なぜならそれは、信用に関わるからです。
トラキアやイリアで傭兵が十分稼業として成り立つのは、彼らの持つ実力と信用が絶大である、というのもあるのでしょう。
これらを考えると、FE世界の軍隊は、事実上その八割くらいは傭兵で構成されているのではないでしょうか。
現在で軍隊というと、志願兵または徴兵制によって集められた軍隊、というのが普通でしょうが、志願兵はともかく、徴兵制は非常に難しいと言わざるを得ません。
FE世界における国家の多くは都市型国家です(これは別に述べます)。いわば、一都市がそのまま国家として存在する形態で、古代でいえばギリシャのポリス、中世に当てはめるなら、ヴェネツィアやフィレンツェがそれに当たりますね。
徴兵制というか、傭兵に頼らない、自国戦力での戦争をやろうとすると、都市型国家では回避不可能の問題に突き当たります。人口です。数百万人の人口がある都市ならいざ知らず、数万人で大都市となる中世ヨーロッパにおいて、都市型国家が数千人の兵士を自国の国民で用意する事は不可能に等しく、傭兵に頼らざるを得なくなります。
しかし領土型国家は別です。全人口が一千万人だとして、千人に一人、兵士として徴用するだけで、一万の軍隊が完成します。実際には維持するために必要な費用とか色々ありますが……。
グランベル帝国は強大な力を有し、大きな軍隊を形成するだけの可能性はありましたが、それでもまだこの当時は、グランベル帝国でも兵力の基本はまだ傭兵でした(ファバルやボイスら傭兵の存在がそれを証明してますね)。おそらくそれは、国民を徴兵する、という考えそのものがなかったのでしょう。ちなみにヨーロッパでは、あのチェーザレ・ボルジアがその原型を最初に始めたそうです。
無論これは全てに当てはまるわけでもありません。
たとえば、リーフ率いるトラキア解放軍は、どちらかと言うと志願兵が多かったでしょうし、セリスも同じでしょう。なぜなら、あの戦いは文字通り人々の未来そのものがかかっていた戦いであり、一般の人々に至るまで、すべての人にとって『他人事』ではない戦いだったからです。よって、その規模はどんどん大きくなっていったことでしょう。……補給を考えなければならない側からしたら頭が痛かったでしょうけど(笑)
ただ、たとえば『封印の剣』や『烈火の剣』『聖魔の光石』の戦いはどうでしょうか。
あの戦いは、少なくとも一般民衆からすれば、支配者が変わっただけ、というレベルです。無論、たとえば聖魔においては、ルネスはわずかな間で荒廃してしまってますが、ぶっちゃけ、他国の人々からすれば、それは『他人事』です。魔王復活が迫っていた、といっても、それを人々は認識してないでしょう。となれば、義勇軍が集まるか、といえばそういう事はなく。まして、ルネス解放がすめば、ルネスの人々でも魔王討伐なんてものには行こうとはしないでしょうから。
となれば、軍隊の中核は正規軍か傭兵になるわけですが、FE世界において徴兵制があるようには見えません。と言うことは、必然的に正規軍の規模はたかが知れてます。つまり、傭兵が中核となるわけです。エフラムが傭兵になりたい、というのは、彼が戦士であり、戦いの中心にあろうとすると、必然的に傭兵が一番適しているからと言うのもあるのかもしれません。
常備軍が少ないだろう、というのは、兵糧の面からも明らかでしょう。
とりあえず兵士一人が一日に必要な食料を……米じゃダメだよなぁ……やはり小麦か。とりあえずパンを基本におくとして、大体一日辺り、小麦二百〜三百グラムくらいが必要っぽいんで、とりあえずそれで。あと塩分補給のための食料もいりますから、概算で一日辺り四百〜五百グラムくらいは必要となります。軍隊なので、栄養価を考えると五百としましょうか。これが一人分。五千人の兵士を維持するとして、一日辺りの必要な食料の総重量が二千五百キロ。これを一ヶ月維持するために必要な量は、実に七十五トンになります。膨大な数ですね。馬車で運搬するとして、大体四輪馬車で一トンくらいは載せられたみたいですから、七十五台。で、馬車を使う以上、当然馬の飼い葉が必要になります。というかそもそも、騎兵がいるなら、その分の食料も必要で、その量は人間の比ではないでしょう(モンゴル民族のような運用するなら別ですけど)。騎兵の数にもよりますが、五千の兵を一ヶ月維持するのに、百台以上の食料運搬の車が必要だったという計算になります。常備軍になればこれが一年中必要になります(まあ輸送の手間はないですが)。生産性の低い作物で維持するには、あまりに効率が悪いと思います。大航海時代以降、ヨーロッパの軍隊が大規模化した理由の一つが、食糧事情の大幅な改善(ジャガイモが入ってきた)というのもあったはずですし。
また、FEのゲームにおいては、そのほとんどが現地を解放するような戦いになっている以上、現時調達というのはまずありえない話でしょう。まあ買う、ということはありでしょうが、基本的には最初に出陣する時に、少なくとも次の補給地までの十分な糧食はもっていなければならない事になります。ましてこれが年単位、となったら、莫大な糧食が必要になります。現在のように生産の安定していない、かつ生産効率の高くない小麦を主食としている以上、数千人の常備軍がいたら、その負担は相当なものになるでしょう。まあジャガイモとかはあるとして、大規模な軍隊があるとしてもいいでしょうが……ゲーム中で傭兵がかなり出張っているところを見ると、やはり常備軍は少なそうな気がします。
結局、通常時の軍隊の規模と言うのはかなり制限されるのではないかな、と思います。
また、そもそも国家という存在が、都市国家の連合体、という側面が強いと思います(特にユグドラル)。各国(各都市)の権限等は独立しており、おそらくですがグランベル王国ですら、バーハラ王家は各公国に対してそれほど強い立場にないのではないでしょうか。出なければ、表立ってレプトール、ランゴバルトらが『反王子派』など立ち上げられるはずもないでしょう。つまり、互いに独立した国家としての存在でもあったのではないか、ということです。無論これは各公国内でも同じ事がいえます。
公国の中に、さらに多くの都市国家があり、それらは互いに独自の軍隊を持ち、反目しあっている。ただし、いざ鎌倉、じゃありませんが、あのイザーク戦争のような大きな戦いにおいては、戦力を供出する『契約』を結んだ関係、とでもいいましょうか。そんな感じだったんじゃないでしょうか。ただ、それらの小都市国家は、常備軍なんておいてない。よって、傭兵団を雇って、それを派遣する、となるわけです。彼らは戦闘のプロですし、信用も出来る、となれば使わない理由もないでしょう。トラキアやイリアは実際これで潤っているわけです。あるいは、イザーク戦争に参戦したトラキア竜騎士もいた……かもしれない。
ただ、特にユグドラル、というかグランベルの騎士である〜リッターというのは、かなり特殊な立場にある軍隊だとは思います。っていうかぶっちゃけ、多分現実には存在しなかったタイプの騎士団でしょう。国家と主君に忠誠を尽くす、戦闘に特化した集団、というのは実は西欧にはほとんど存在しません(近いのが宗教騎士団でしょうか)。どちらかと言うと、これらの騎士団のイメージは、日本の武士と『騎士団』というキーワードが融合した感じですね。西欧の騎士というのは領地を持つ貴族の一つですし、また、こちらによると、なんと騎士というのは主君(国王)のために戦う期間に上限があったらしいです。つまり、契約によって成り立っていたと言うわけです。ある種傭兵といえなくもないのかな? 無論、忠義の騎士というのがいなかったわけではなく、有名なところでは騎士ローランとかはまさに『騎士の鑑』的に日本でも捉えられていますね。
なんかずらずらと書きましたが……とりあえず結論、というか私の考えと言うかをまとめておくと。
FE世界においては、騎士団というファンタジーな存在以外の常備軍は極めて少なく、せいぜい数百から一千程度。有事の際に軍隊の中枢を占めるのは、そのほとんどは傭兵だった。
多分これが一番自然な姿じゃないかと思います。
っていうか東洋の異常な軍隊の規模が普通じゃないんですよ、結局。
あ、ローマ時代は例外ですね。あの時代は補給路とかが中世とは比較にならないほど整備されていましたので。詳しくは、こちらを……(ぉ
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