こんこん、と。 星矢は大きな樫材の扉をノックした。そこは、この家の主、そして星矢たち聖闘士が仕える対象である、アテナこと城戸沙織の部屋である。 「はい、どなたでしょう?」 「あ、星矢だけど。なんか来客があるって……」 「来客? とにかく、どうぞ」 ああ、と返事をして扉を開け――そこで星矢は凍りついた。 彼女がドレスを纏っているのはいつものことだ。むしろこれで、Gパンやらの、普通にありそうなラフな格好をしていたら、その方が驚きである。 だが、さすがに星矢もこのドレスは予想していなかった。 「どうしたのです? 星矢……あ、ふふっ。似合いますか?」 彼女はその場でくるりとターンをするように、一回転する。 その遠心力で、すその長いドレスと彼女の髪がふわりと舞い上がった。 「あ、いや、その、似合うと思う……よ」 その、純白のドレス。それは普通、女性が結婚式の時に纏うものであることは、さすがの星矢でも知っている。 「来客、というのは?」 「あ、えっと、なんか雑誌社の人とか。アポは取ってるとかなんとか……」 「ああ、じゃあこれですね」 沙織が言うには、ある雑誌でウェディングドレスの特集を組んだらしく、そのモデルの一人に沙織が選ばれたらしい。それで、ドレスを試着していた、ということだ。 「とりあえず客間で待ってもらって下さい」 「ああ……それで、写真を?」 「ええ」 その時星矢は、なんとなく複雑そうな顔をしていた。 「大丈夫ですよ。今回、ドレスの特集だそうなので、横に男性が立つことはありません」 「なっ……いや、そうじゃなくてっ」 星矢がうろたえるのを見て、沙織はくすくすと笑う。 そして、星矢がとにかく伝えたから、と回れ右をして扉に向かっていき、扉の影に消える寸前。 「でも星矢なら、立ってくれてもいいんですよ?」 どたた、と。 派手に転ぶ音がした後、足音が急速に遠ざかっていった。 |
超短編。星矢×沙織です。ええ、それだけです(ぉ |