どこまでも青い空と海が、目の前に広がっていた。エーゲ海は、一般的にも人気のある観光地であるが、この美しい海と空を見ていると分かる気がする。 ただ今、海に程近い崖の上からその海と空を見ている男は、その景色を愉しむ心境ではなかった。 「ここにいたのか、ミロ」 問われた男は、それには応えず、なおも海を見続けていた。 「アルデバランが探していたぞ。シャカもな」 「ああ」 「気持ちは、分かるがな」 おそらくは史上初の、黄金聖闘士の反乱。それによる犠牲者は、実に黄金聖闘士の、五人もが死ぬという事態になった。 そしてその死者の列に、ミロが特に親しかった友人、カミュがいたのである。 「なぜ死なねばならなかったんだろうな……」 カミュを殺したのは、カミュの弟子である氷河だった。そしてミロも、その氷河と戦った。 確かに氷河は強かった。だが、それでもカミュが破れるとは思えなかった。 戦いの中で彼ら青銅聖闘士は確かに急激に成長していたが。 「なぜ、か……」 「いや、お前にとっては、その問いは十三年前から発したいものかもな、アイオリア」 十三年前、アイオリアの兄アイオロスは、聖域でただ一人、真実を知り、アテナを守って、そして死んだ。 それから十三年間、アイオリアは裏切り者の弟という、結果から言えば不当この上ない謗りを受け続けてきたのだ。 その、十三年間の偽りを暴く代償。それが、黄金聖闘士五人の命だったのかもしれない。 いわばこの喪失は、真実を見抜けなかった自分達の、償いなのか。 「だが、これで終わりではない」 アイオリアの言葉に、ミロは黙って頷く。 そう、何も終わったわけではない。アテナの再臨は、新たな聖戦の始まりを意味する。それは、この様な反乱ではない。必ず近いうちに、大きな戦いがある。だがその事態に、彼らは五人もの最強の戦士を欠いた状態で立ち向かわなければならないのだ。 「……五人、か」 ふと、その人数を口にした時、ミロはある符号に気が付いた。 「元々射手座は空位であったことを考えると……実は、ちょうど、か」 「ん? ……ああ、なるほど」 この戦いにおいて、重傷を負ったとはいえ生き残った青銅聖闘士。星矢、紫龍、氷河、瞬。 「彼らは……彼らこそが次の世代の、黄金の輝きを担うものなのかもしれないな……」 ふと、消えかけている手首の傷を見遣る。自分達から流れ出たその血は、彼らの聖衣を蘇らせるために使われた。 誰となく、そうしようと言い出した。それは、誰もがわかっていたのだろう。彼らが、自分達に続く、新しい『力』だと。 「俺達も……うかうかしていられんな」 「ああ」 アイオリアは、何を、と聞くまでもなく同意した。 同じ考えを持っているからだと。 それは、確信と言っていいものだった。 |
聖闘士星矢、黄金の話。こっちはサガの反乱の直後ですが。なんとなく書いただけです。深い意味はありません(^^; |