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永き誓い・第十話




 シレジアの雪解けは遅い。グランベルでは春を知らせる鳥たちのさえずりが聞こえるようになっても、まだシレジアは雪に閉ざされている。だが、その深き雪ゆえに、シレジアは長い間他国に攻め込まれることなく中立を保ってきたのだ。しかし、そのシレジアの独立性も、いまや失われようとしている。
 去年の冬の入り口から始まったシレジアの内乱は、シレジア全土を巻き込み、そしてグランベルの軍をシレジア国内へと入れる事態にすらなった。
 そして、そのシレジアに滞在するシグルドの存在は、グランベルの、シレジア侵攻の口実となってしまうのである。一度侵入した以上、グランベルはもはやシレジアに軍を向けることに躊躇することはないだろう。
 だから、シグルドは自らシレジアを出ることにした。それは、逃げるのではない。グランベルの王都バーハラへと行き、みずからの身の潔白を証明しようというのだ。もはや、グランベルの追求から、これ以上逃げ続けるのは不可能であり、ならば、自ら死地へと赴き、逆転の一手を繰り出すより他にはない。シグルドは、そう判断した。
 そしてシグルドは、グランベルと戦うにあたり、軍を抜ける者は追わないことを確約した。
 何しろ、今度の相手は、いわば祖国となる者が多い。それに、抵抗を覚えない者はいないだろう。
 だが、ここまでシグルドに付き合ってきた者で、ここで脱落するものは皆無だった。
 絶望的とすら思える、グランベルとの戦い。しかし、彼らは誰一人として逃げ出そうとは思わなかったのである。もちろん、イザークの王女アイラも、その夫であるホリンも同じであった。

「本音を言えば、無理はしてほしくないのだがな」
 そう言いながらも、ホリンはアイラに軍装を手渡している。アイラの鎧は、その動きを重視して硬皮に、金属を補強してあるもので、非常に軽い。もともと、今までこと接近戦で敗れたことなどアイラには一度しかない。その一回は、さすがに相手が悪かった、というしかない相手である。
「無理はしない。大丈夫だ」
 先の戦いで不覚をとって以来、アイラの戦い方には冷静さが加わった。シャナンに言わせれば、初めて後ろを注意するようになった、ということである。
 しかし、それでなお、アイラは前へ進む戦い方を続けていた。しかし、それは油断ではない。ホリンが常に自分の後ろにいることを知っているからなのである。
 それは、シャナンにも分かっている。無論、ホリンにも。だが、そういうこととは別に、心配はしてしまうものなのだ。

 シグルド達がザクソン城を進発したのは、ザクソン城周辺の雪が解けて、大地が見え始める頃だった。
 シレジアは、冬は確かに厳しいが、その雪の下で、春に向けた生命が、息づいていて、それが姿を見せることで、シレジアの人々は春を知る。そしてシグルド達も、そうやって春を――決戦の時を知ることになった。
 ザクソン城に拠って戦うことも、考えなくはなかった。ただ、シグルド達にとって、間違いなくこのシレジアは第二の故郷である。そしてこれ以上、この美しい大地を戦いに巻き込みたくない、というのもまた、全員の想いであったのだ。
 最初の目標はリューベック城。グランベルの最北端の城であり、フィノーラと並び、イード砂漠を監視するための城である、とされている。だが、今回、このような形でグランベルに入ることになって初めて、シグルドはこの城の目的がイード砂漠の監視のためだけではなく、というよりむしろイザーク、シレジア両国を監視するためにある城であることを悟った。
 リューベック城の西はシレジア、東はイザークである。グランベル王国と国交のないこの両国の間にあるこの城は、考えてみればその存在すら不自然に感じられる。かつて、この城が造られた時の思惑などシグルド達の知ったことではないのだが、あるいはその目的は別だったのではないか、という疑念を感じられずにはいられない。
 いずれにせよ、グランベルへ入るためには、このリューベックを落とさなければならない。
 リューベック、フィノーラ、そして親衛隊長アルヴィスが当主であるヴェルトマー。これらを突破すればバーハラに至ることが出来る。
 その最初の関門を守備しているのは、シグルドの父、バイロンの政敵、ドズル公爵家のランゴバルトであった。聖斧スワンチカの後継者。そしておそらく、バイロンを陥れ、シグルドを国から逃げ出さざるを得なくした人物の一人。シグルドにとって、戦うことに何の躊躇も必要ない相手であった。

 リューベックの先遣隊は、当然グラオリッターであると思われていた。ところが、グラオリッターはまだイザークの鎮圧が終了しておらず、グランベルに戻ってきてはいない。それはシグルド達にとって、幸運であった。
 そしていざ激突、とシグルド軍が布陣したとき、敵の部隊の一部が極端に突出していた。これを非常に不自然に思ったオイフェが、その正体を確かめると、それは、行方不明であったバイロンを追っていたのである。
 短いが激烈な戦闘の後、シグルド達はバイロンを助け出すことができた。バイロンは、長くリューベックに囚われていたのである。おそらく、ランゴバルトが、シグルドに対する人質として使うつもりだったのだろう。
 長い虜囚生活を強いられたバイロンは、ひどく衰弱していた。
 シグルドも、父がもう長くないことは、分かっていた。父の手にある聖剣が光を失っている。それは、父の力の、生命の衰弱を示しているのだ。
「父上……」
「そのような声を出すな。仮にも一軍を束ねる者が」
 衰弱しきっていてなお、バイロンは、シグルドの知る強き父の面影を覗かせた。だが、それもまた虚しく思えてしまう。それが、燃え尽きていく最後の気力を感じさせてしまうのだ。
 シグルドの横にいるセリスは、まだよく分かっていないのか、初めて見る祖父をただ呆然と見ている。そのセリスを連れているのはシャナンだ。セリスが、シャナンから離れたがらなかったから一緒にいるのである。
「お前の子か。結局わしは、新しい娘を見る事が出来なかったか」
 その言葉は、今のシャナンには辛かった。自分の目の前で攫われたディアドラ。もっと自分に力があれば、と今でも思う。
「そなたがイザーク王マリクル殿の御子息か。なるほど、よく似ておられる。」
 バイロンはセリスの横に立つ少年に目をむけるとそう言った。シャナンは驚いて目の前の老人を見た。その目は、かつての敵の子を見る目ではなく、おのが子を見るような優しさすら感じさせたのだ。
「父さ……父をご存知なのですか?」
 自分は部外者であり、割って入るべきではない、と分かってはいた。だが、それでもなお、シャナンは尋ねずにはいられなかったのだ。
「不幸な形ではあったがな。わしはマリクル王と戦った。シャナン王子。誇りに思っていい。わしはもちろん、レプトールと、クルト王子の三人をして、かの王に圧倒された。マリクル王は、少なくともわしの知る限り最強の剣士じゃ」
 その言葉にはむしろ、シグルドが驚いていた。父をして、しかも聖剣ティルフィングをもって敵わないとは。しかし同時に、それだけの力、というものは、わからなくもない。イザーク王家の力は、絶大と言っても過言ではない。
 実際、アイラとホリンは、シグルド軍にあっても最強の二人である。その力には、シグルドも一目置いているのだ。
 ただ、それだけの力を持つマリクル王でも、戦死したのだろう。言葉には出さない。だが、それはシャナンにも分かっているようだ。
「シグルド」
 老いた父の言葉に、シグルドははっとして、父に向き直った。その父の手が、自分に向けられる。そして、その手には聖剣ティルフィングがあった。
「とれ。もはやこの剣はわしには不要じゃ。お前に託す。よいか、すべての元凶の正体はわしにも分からん。だが、少なくともレプトールとランゴバルトの二人は、それに与しておる。わしの力では、奴等には敵わなんだ。だが、お前なら、これほど多くの仲間と共にあるお前なら勝てる。そして、その先にある邪悪を見据えるのだ」
 シグルドは何も言わずに、聖剣を受け取った。シグルドには、それしか出来なかったのだ。
「シャナン王子。全ては我らの不徳の致す所。なれど、わが孫セリスの友として、そしてよき師として、どうか力を貸して欲しい。……いや、勝手な願いだな、これは……」
 しかしシャナンは、その言葉にはっきりと首を縦に振った。
「僕……僕は、セリスの兄になる。そして、セリスを護る。それは、他の誰でもない、ディアドラに頼まれたことだから……」
「……かたじけない。シャナン王子……貴公の行く道は、おそらく多くの苦難が待ち受ける道であろうが……貴公なら、きっと……」
 まるで予言めいた言葉を紡ぐようにバイロンは言うと、そのまま寝台に倒れ込む。
「疲れた。少し休むとしよう。シグルド、後は任せた」
 バイロンはそのまま静かに目を閉じた。そして、再び目を開ける事はなかった。

 それからのシグルドの行軍は早かった。もちろん、あまり時間を置いている余裕などなかった、という事もある。
 バイロンに逃げ切られたランゴバルトは、方針を正面決戦に切り替えてきた。そして、騎馬隊の指揮を側近のスレイダーに任せて、自分はリューベック周辺の歩兵を指揮し、シグルド軍に対する迎撃布陣を整える。
 これに対してオイフェは、シグルドを筆頭とした精鋭部隊で騎馬隊を攻略、他の部隊はその戦場を迂回し、リューベック周辺の歩兵を殲滅する事を提案した。
 本来、数に劣るシグルド軍が二正面作戦をする事は自殺行為である。だが、シグルドが聖剣を手に入れ、またシレジアの王子レヴィン、ユングヴィの公女ブリギッドの手にもそれぞれ、風の神魔法フォルセティ、聖弓イチイバルがあり、その力は一人をして数十騎、数百騎以上に匹敵する。なればこその分進攻撃なのだ。
 そして、シグルド、レヴィン、ブリギッド他、騎兵を中心とした部隊が編成された。ホリン、アイラは本来であればシグルドたちと行動を共にするのだが、騎兵を中心に編成したため、リューベックへ迂回する部隊に回ったのだ。
「進軍!!!」
 シグルドの声と共に、シグルド軍は大きく二つに分かれ、進軍を開始した。別動隊の指揮を執るのはレックスである。彼は、自ら志願して別動隊に回ったのだ。その目的がなんであるか、シグルドは分からなくはなかったが、あえてそれを了承したのだ。

 レックスの指揮する歩兵部隊は、なんの問題もなく、リューベック城の間近にまで到達した。
 リューベック城はなだらかな丘陵のふもとにある。周りが見渡しが聞く分、奇策を弄される心配はないが、自分たちが攻撃するときも丸見えとなる。そのため、どちらも何か変わった手を打つことなく、リューベック城の正面にある平原で、両者は激突する事となった。
 どちらが先に突撃を命じたかは分からない。おそらく、ほぼ同時であっただろう。多少の起伏のある大地は、お互い歩兵が中心であるためその移動を少なからず阻害し、結果、両軍は小さな集団に分断されてしまう。しかしそうなると、ここまで幾多の戦いで鍛えられてきたシグルド軍の方に分があった。
 特に、アイラ、ホリンの部隊の強さは圧倒的だった。ともすると、剣舞にすら見えるアイラの剣技は、一瞬で複数の敵兵を打ち倒し、その道を切り開く。初撃で圧倒されてしまい、逃げ腰になった敵兵とシグルド軍とでは、勝負になるはずもない。
 一方、複雑な思いで武器を振るっている者もいた。ドズル公子レックスである。
 リューベックの兵は彼の故国の兵ではないが、それを指揮しているのは彼の実父である。だが、それゆえに彼は自分の父親がどこにいるか、ほぼ見当がついていた。
 この戦いに関する限り、父親であるランゴバルトを倒せば、終結する。実際、勝てはしないだろう。父は、あの神器、聖斧スワンチカを持っている。あの、絶大とも言える防御力の前では、自分の攻撃など効きはしないだろう。だが、それでもレックスは、父ランゴバルトと戦わなければならない、と感じていたのだ。
「どけえ!! 親父はどこだ!!!」
 いくら継承者ではないとはいえ、レックスもまた、斧戦士ネールの力を継承する聖戦士である。ドズル家最精鋭のグラオリッターならともかく、リューベックの守備兵ごときでは相手になどならない。
(いた)
 親子だから分かるのか、あるいはおなじネールの血を引くから分かるのか。とにかくレックスは父を知覚した。その圧倒的な存在感を。
 そしてその場所に、確かにランゴバルトはいたのである。巨大な、それでいて美しさすら感じさせる斧――スワンチカとともに。
 聖斧スワンチカ。強力な防御力を誇る、最強の斧である。防御力に秀でた武器であるとはいえ、その破壊力もまた、普通の武器とは比べ物にならない。神器の威力は、よく知っている。そして、自分が父には勝てないであろうことも。
「親父ぃ!!!!」
 声と共に、レックスは父親に斬りかかった。しかし、あえなく受け止められる。まるで、金属の塊を殴り付けたような衝撃が、腕に伝わってきた。かろうじて斧を取り落とさなかったが、連撃を繰り出す事は出来なかった。
「ふん、レックスか。シグルドと共に行動しているとは聞いていたが。父に刃向かうとはな。この愚か者が!!!」
 そういう時の父が容赦しないのは、よく知っている。だから、レックスは油断をしていないつもりだった。だが、これはそういうレベルではなかったのかもしれない。
 たった一撃で、レックスは素手になっていた。実力が違う事は分かっていたが、これほどとは。
 だが、ランゴバルトの追撃は、レックスには振るわれなかった。直後、ランゴバルトの頭上に、剣撃が降り注いだのだ。
 流星剣。この剣技が使えるのは、シグルド軍にあっては一人だけである。イザークの王女アイラ。彼女の操る流星剣は、圧倒的な連撃を繰り出す事の出来る不可避の技である。まして、重甲冑を着込み、巨大な斧を持っているランゴバルトに避けられるはずもなかった。
「水を差すべきではないとは思ったが、指揮官がやられては困るので……!?」
 アイラはかろうじて飛びのいた。直後、アイラの立っていた大地が裂ける。舞い上がった土煙の中にいたのは、ランゴバルトだった。
「馬鹿な……すべて直撃したはずなのに……」
 アイラは驚愕したが、直後、自分の腕が痺れているのに気がついた。人を斬ったような感覚ではない。聖斧スワンチカは所有者の防御力を圧倒的に高める力があるという。おそらく、その力だろう。だとすれば、アイラの力ではランゴバルトを倒す事は出来ない。今の流星剣で倒せないとなると、悔しいが、あの圧倒的な防御力を破る力は、自分にはない。それこそ、神器でもなければ。あるいは。
 アイラがその、もう一つの手段を思いついたとき、彼はちょうど現れた。長大な、銀色に輝く大剣が、陽の光を美しく反射している。
「アイラ。そいつは俺がやる。レックス、すまないな」
「好きにしろ。俺の私闘じゃあない」
 ホリンはそうか、とだけ言うとランゴバルトに向き直った。長大な剣を水平に構える。
 月光剣。ありとあらゆるものを斬り裂く、とすら云われているイザークの秘剣、三星剣の一つ。おそらく、神器以外であのスワンチカの護りを貫ける力があるとすれば、それは月光剣だけであろう。だから、アイラは手を出さなかった。
 ランゴバルトは、おそらくその自らの護りに、絶対の信頼を置いているはずだ。だが、その油断が隙に繋がるはずである。
 動いたのは同時。しかしその踏み込みは、なんとランゴバルトの方が深く、速かった。そしてそのまま、スワンチカを振り下ろしてくる。ホリンは、ランゴバルトが振り下ろしてきた斧を、剣で受けた。まともに受けては、銀の大剣とて、折れる可能性があるが、ホリンはその刃の上で、聖斧の一撃を滑らせて、威力を殺した。そして、無防備なランゴバルトの身体がそこにある。
「もらった!!」
 生じるのは淡い燐光。そして、その後に響いた音は、しかし不快さすら感じさせる金属同士の激突した音だった。ホリンの剣は、スワンチカの柄を斬りつけていたのだ。
「ふん、やはり月光剣か。だが、さすがにこのスワンチカまで斬る事はできんようだな」
 強烈な殺気を感じて、ホリンは慌てて飛びすさった。紙一重で直撃は避けたはずだが、胸部に激痛が走る。かすっただけであったはずなのに、鎧に真一文字に亀裂が走っていた。
「な、何故月光剣を……」
 月光剣はイザークの秘剣。しかも自分以外で使えるとしたら、それは自分の父親しかいないはず……。
「まさか、貴様……」
「ほう、察しが早いな。そうだ。イザークの戦いで、わしはその月光剣を使うソファラの領主のラザンという男と戦った。まさか、このスワンチカの護りを貫く力が、神器以外にあるとは思わなかったがな。大方、お前のその技はその男から教えられたものだろう。いや、剣そのものもか。くせが同じだからな。だからすぐわかったのだ。残念だったな。このわしに勝とうなど、所詮きさまらには無理なのだ」
 その言葉で、合点はいった。確かに、自分の剣はラザンに教わったものだ。クセなども似ていて当然だろう。実の父子なのだから。
 おそらく父は、このランゴバルトと、イザークの戦争で戦い――そして敗れたのだろう。つまり、このランゴバルトは父の仇、ということにもなる。だが、だとしてもどうやって戦えばいいのか。月光剣は、発動させる時に、一呼吸置く必要がある。そしてその隙を逃すランゴバルトではない。だが、月光剣なしでは、ランゴバルトには到底勝てはしない。
「ふん、無駄なあがきはそこまでにしておけ!!」
 その巨大な斧が振るわれた。見るからに重そうであるというのに、まるで細棒を扱うかのように振りまわしている。まるで暴風だ。アイラにも、ホリンにもレックスにも、躱し続ける以外に術はなかった。
 そして、シグルド軍の誇る三人の戦士が圧倒される様は、そのまま他の兵士達の動揺へとつながってしまう。だが、かといって反撃の方法などありはしない。
 たった一人の力で、部隊全体が恐怖に陥れられるのか、と思った時、ランゴバルトの動きが止まった。そして、その視線の方向にいたのは、シグルドであった。
「すまない、遅くなった」
 シグルドはそれだけ言うと、馬を進める。ランゴバルトもまた、油断なく斧を構えていた。
「ランゴバルト、父バイロンの無念、晴らさせてもらう」
 静かに、だが強い意志を持ってシグルドが宣言する。その時、戦場は確かに停止していた。
 神器対神器。人の力を超えた力同士の激突。それが今、目の前で繰り広げられようとしていた。
「ゆくぞ……っ!!」
 先に動いたのは、シグルドだった。

 戦いは終った。
 ランゴバルトを討ち取ったシグルドは、そのままリューベックを制圧した。
 聖斧スワンチカは、そのままレックスが預かることとなった。いずれは、後継者であるダナンに渡されるのだろうが、それまではレックスが持っている事になったのだ。
 シグルド軍は、グランベルとの前哨戦に勝利した。次に向かうのはオアシスの城フィノーラ。しかし、その間には広大なイード砂漠があり、また、ヴェルトマー家の魔法騎士が、常に侵入者を監視している地域である。
 だが、それでもなお、シグルドは行かなければならない。父と、自分の無実を晴らすために。

 運命はついに廻り始めた。そしてそれは、一人の少年の運命を大きく変える事になるのである。



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