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季節は春のはずだが、吹き抜ける風に、春の暖かさを感じることは出来なかった。それは、この大地が寒いのではなく、人々が春の到来を喜ぶ気持ちを失いつつあるからだろう。 風になびく髪は、彼に二つのことを思い出させた。 彼を、命をかけて守ってくれた人と、愛してくれた人。そのうち、死を見届けたのは一人だけ。 その彼女が死んだとき、自分の全てが崩れたような気すらしたのだが、時間というのは無情なもので、ただひたすら、等速に過ぎていく。もちろん、それが当然なのだろうが、時が悲しみを癒してくれる、というのはあながち嘘とも思えなかった。 あのとき、フェイアが谷底に落ちてから後のことを、シャナンはほとんど覚えていない。気がついたら、オイフェと共にティルナノグに来ていたのだ。それから、もう一年。はじめは、食べるのにすら苦労する状態で、餓死者が出なかったのが不思議なくらいであった。だが、セリス達も含めて、全員で耐えて冬を越したのである。 セリスはもう十五歳。すでに子供といえる年齢ではなくなりつつある。ただ、赤ん坊の頃から見ていたから、どうしてもまだ子供だという印象はぬぐえない。それは、スカサハやラクチェにしても同じなのだが。 考えて見れば、セリス達がその年齢、ということはディアドラが攫われてからも同じだけ時が経っている、ということだ。そう考えると自分が年を取った、などという気もしてくる。 だがそれでも、あの時のことを忘れられそうにはない。自分の目の前で攫われたディアドラ。あの時から、自分の戦いは始まっていたのかもしれない。 セリスを守る。 それは、神聖なる誓い。たとえ自分が血にまみれ、地に倒れ伏せても。それでも果たすべき約束である。 しかし。 それでもなお、自分の失ってきたものを思い返さずにはいられない。 アイラ、ホリン、シグルド、ミデェール、そしてフェイア。かけがえのない仲間であり、友であり、親であり、そして恋人。だが、失ったものは戻っては来ない。塞ぎ込んでいたとしても、死んだ者が戻ってくることなど、ありはしないのだ。 「シャナン様」 呼ばれて、振り返る。立っているのは一目でイザーク人とわかる兄妹。シャナンにとって従兄妹にあたる、スカサハとラクチェである。もう十四歳。すでに、体つきは子供のものから大人のものに変わりつつある。ラクチェなどは、オシーンに言わせれば幼い頃のアイラの生き写しのようだ、という。シャナンはアイラの子供の頃など、当然見たことなどないから、分からない。ただそれでも、アイラに似てきたな、とは思う。 性格は、というと、これもまたアイラの子供の頃のようだ、というのはオシーンやかつてイザーク城にいた者達の共通した意見である。 ラクチェの双子の兄スカサハは、妹とは違ってずいぶんと落ち着いた性格である。物静かなところは父ホリンに似たのかと思うが、どちらかというと、騒がしい妹のなだめ役をやっていうる内に形成された性格にも思える。 ただ二人とも、剣の技量に関しては凄まじいものがあった。多分長じれば、アイラ、ホリンをも追いぬく実力を秘めている。時々、自分もうかうかしていられないな、と思えるほどだ。 剣の技量に関しては、セリス、デルムッドも群を抜いていた。ことセリスは、年長者であることもあるが、今ではシャナン、オイフェ以外にはティルナノグでは勝てるものがいない。そのオイフェも「あと数年で抜かれると思いますよ」と言っているほどである。デルムッドもまた、ヘズルの血を引くだけあって、その剣才はずば抜けている。 子供達の剣の師は、少し前まではオシーンが努めていたのだが、さすがに老齢で、そろそろ剣を持つのすら辛くなってきている。最近はシャナンが努めることが多い。オイフェも時々相手をしている。 ドズルでは、まだ表立っては子供狩りは始まっていない。ただ、孤児院などはやはり狙われているらしい。しかし、それもそろそろ限界だろう。いつ弾けるか。それは時間の問題だ。 その時のための力。それを、蓄えておくことは、決して無駄ではないだろう。 「ソファラまで行くのか。なら、途中まで同行しよう」 双子に続いて、もう一人の人物が現れた。イザークにはまずいない、グリーンの髪の毛。シャナンは、もちろんこの人物をよく知っていた。 「レヴィン王子。いや、レヴィン王」 シャナンはわざと言い直した。すると、呼ばれた方は露骨に嫌な顔をする。 「できればそうは呼んでほしくないのだがな。シレジアは、もうない。俺は一介の放浪者。王や王子などと呼ばれるほどたいそうな人物じゃない」 しかしシャナンは、薄く笑っただけでそれには答えなかった。 ティルナノグに来て、数ヶ月後、突然レヴィンが現れたのだ。シャナンはたいそう驚いたが、オイフェから話を聞いて納得した。オイフェが、何故国外の情報に詳しかったのかというと、全てレヴィン経由の情報だったのだ。 レヴィンが何故あの中で生き延びたのか。それは彼自身も語らなかったし、またオイフェもシャナンも聞こうとはしなかった。 ただ、誰が生き延びて誰がどうなったか、ということだけは聞くことが出来た。そしてそこで、シャナンはアイラとホリンの死を確認したのである。 分かってはいた。だが、それでもはっきりと聞かされたときの衝撃は小さいものではない。 スカサハとラクチェに、両親の死を話すべきかどうか、最後まで迷ったのだが、結局、話している。二人は、三日間泣き続けた。 レヴィンの話によると、イザークはまだかなりマシな方らしい。地域によっては――たとえばミレトスなどでは、すでに大掛かりな子供狩りが復活していて、相当数の子供が、連れて行かれた、という。しかもそれを、圧倒的な武力で恫喝して、反乱を起こさせないでいるのだ。 小さな反乱はあったらしいが、文字通り皆殺しにされた挙句、その家族も子供以外は全て殺されたらしい。子供は、連れて行かれたのだ。 すでに帝国は、少なくとも初期の威光を失っている。 治安は乱れ、人々は嘆き、そして国家に属するものが、特に暗黒教団が幅をきかせている。皇帝アルヴィスが何の意志があって、これらの事態を黙認しているのかまでは分からないのだが、少なくとも帝国のその秩序が、崩壊に向かっているのだけは確かである。 しかし、具体的にどうするべきか。それを、シャナン達は決めかねていた。 目の前で火事が起きていない、というのもある。少なくとも、このイザーク――ドズル王国の人々は、まだそれほど恐怖におののいて生活しているわけではない。それに、反乱を起こすとしても、現時点でのティルナノグの勢力は、ドズル軍と比して、あまりにも脆弱であった。 「次はどこへ?」 「レンスターだ。そのあと、一度シレジアに戻る」 「子供達のところへは戻ってあげないのか?」 レヴィンは「嫌なやつだ」とでも言うような顔になったあと、シャナンから顔を背けた。 レヴィンが、子供達のところへは戻っていないだろう、というのはシャナンの推測だった。だが、当たっていたようだ。 昔と、なにかが違う気がする。それが、シャナンが数年振りにレヴィンと再会した時の感覚だった。だが、それがなんなのかまでは分からない。 「ソファラまで行って、曽祖父に失われた秘剣を伝授願う、か。戦うためか?」 シャナンは分からない、というように首を振った。多分いずれは戦うことになると思う。ただ、その目的が決まらない。 いつかこの地でも始まるであろう子供狩りを防ぐために、ただ神出鬼没で義賊のように戦うのか。それとも、帝国を打倒するのか。イザークだけ解放するのか。それは、セリスも、シャナンもオイフェも決めかねていた。 「いずれにしても『力』があることは悪いことじゃないだろう。力がなければ、何も出来ないことだってあるのだから」 「それもそうだな」 レヴィンはそういいながら歩き始めた。シャナンも歩き始める。二人のやり取りを、半ば呆然と見ていた双子は、慌ててそのあとに続いた。目指すはソファラ近くの村。ホリンの祖父がいるという村である。 |
ソファラまでの道のりは、決して楽なものではない。ティルナノグは西と北は海に、東を砂漠に、南を高山に囲まれた、そもそもそれ自体も険しい山奥にある陸の孤島なのである。 商人なども、ここまで来る者はいない。 だからこそ、これまで見つかることなく過ごしてこれたのである。生存が判明すれば、即捕縛されるような人物が、ここには何人もいるのだ。 ティルナノグの現在の人口はおよそ二百人。多くは、かつての戦争で親を失った子供や、敗残の兵士、その家族達である。数が増えるほどに食料が増えれば言うことはないのだが、実際にはそう上手くいかない。 それもようやく、開墾などを精力的に推し進めた結果、なんとか食料を自給できるようになったのだが、そうなると外に目を向けるようになる。その時に考えたのが、スカサハとラクチェに、父ホリンの秘剣、月光剣を修得させることだった。 実際、彼ら二人はソファラの後継者でもあるわけで、ソファラで伝えられていた秘剣を受け継ぐことは、むしろ義務に近い。流星剣であれば、シャナンが教えることもできるが、月光剣はそうはいかないのだ。 今回、特に時間的な制約はないのだが、それでもシャナン達は山越えのルートを選んだ。砂漠を越えるのも山を越えるのもその労力においては大差なく、そうなると砂漠越えは下手をするとガネーシャの兵に見つかる可能性がある。下手に疑われて、砂漠の向こう側から来たことがばれると、面倒なことになる。 それに、時間的にも、山を越えていった方が、明らかに早いのだ。 「あなたが山歩きが得意だとは思わなかったな」 シャナンはやや皮肉そうに言った。シャナンでも、すでに少し疲れてきている。スカサハや、ラクチェは言うに及ばず。だが、レヴィンはそれでもなお涼しい顔をして歩いているのだ。 「なに、ずっと旅から旅の生活だ。慣れるさ」 それにしても、とは思うのだがどちらにしても、スカサハとラクチェの疲労を考えると、この辺りで休む必要があった。 適当な休憩場所を定めて、思い思いに座る。 「二人をその老人に預けた後、お前はどうするんだ?」 そう言いながらも、慣れた手つきで火をおこして、すでに食事の用意を始めている。確かに、旅慣れているのは確かだ。かつてのレヴィンからは、ちょっと想像がつかない。 「いや、多分数日しか必要ないと思う。だから、その間私はソファラ周辺の様子を見て回ろうかと」 「そんな簡単なものか? その伝授っていうのは」 レヴィンはちょっと驚いた。 「そうだな……あなたの使う、風の魔法みたいなものだと言えばわかるかな? 血をもって、継承される」 シャナンは言葉を探すようにしながら答える。 「私も、別に流星剣を誰に教えてもらったわけでもない。ただ、自分でどうすればいいか、それだけ分かっていた。多分あの子らも、それを漠然と知っているはずだ。ただ、そのきっかけを作ることが必要なだけだからな」 レヴィンはそんなもんか、とうなずいた。 「お前は、修得しないのか? 月光剣」 これには虚をつかれたのか、シャナンはちょっと驚いている。 「無理に学ぼうとは思ってないし……」 「必要もない、か」 シャナンはそれは否定しない。 「けど、あの子達には大きな力になる。だからわざわざ、ソファラまで行くわけで」 「イザークの秘剣か。全く知らない奴が修練で身につけるってこと、できるのか?」 シャナンはしばらく考えていたが、ふとあることを思い出して「できるはずだ」という。 「もう一人いただろう。イザークの秘剣を使う人が。失われたはずの秘剣をな」 その言葉で、レヴィンはシャナンが考えている人物と同じ人物を思い出した。 「デューか……確かにあいつ、よく分からない奴だからなあ」 エーディンと共に、シグルド軍に参加した盗賊の少年。 なのに、結局最後までシグルド達に付き合い、あの『バーハラの悲劇』ではヴェルトマー城に待機していたから生き残っているらしいが、その後の行方は分かっていない。 その彼が、一度だけ見せた秘剣。イザークでは失われたはずの太陽剣。彼がどこで身につけたのか、そもそも彼が何者なのか、知る由もない。 だが、明らかにイザーク人ではなかった。もっとも、髪の色が判断基準にならないのはホリンという実例がいるから、一概には判断できないが、持っている雰囲気も違っていたと思う。 「多分、誰か、太陽剣を未だに伝えている人から学んだんだと思う。であれば、全くの他人が修得するのは、不可能じゃない。ただ……」 「相当な素質と、努力は要求されるだろうな。デューがそんなのをやったかどうかは知らないけどな」 あのあどけない表情の盗賊の少年――もし今も生きているとしたら立派な青年のはずだが――と、厳しい修行はあまりイメージ的に結びつかない。だが、実際にどうだったのか、など、誰も知るはずもないのだ。 「いずれにせよ、がんばってくれ。レンスターでは、リーフ達も、というよりはフィン達も立ち上がるべきかどうか、迷っている。だが、いざというときに、戦う力がなかったら話にはならないからな……っと。そろそろいいか。二人を起こしてこい」 レヴィンは火にかけていた鍋をどけた。シャナンは少し離れたところで、疲れきって休んでいる二人のところへ行って、小さく微笑んだ。 剣は卓越した技量を持っていても、やはりまだまだ子供だということだろう。スカサハとラクチェは、よほど疲れたのか、仲良く並んで安らかな寝息を立てて眠っていた。 |
ソファラの街に来るのは三年ぶりである。レヴィンは、街の入り口まで来たところで「まだ時間もあるからな。私はもう少し先まで行くことにする」というと先に行ってしまった。止める間すらなく、シャナンは半ば呆然とレヴィンを見送ってしまった。 そのあとシャナン達は、とりあえず気を取り直してソファラに入った。目的の村までは、今から行くと日が暮れてしまうのだ。 ソファラの街は、意外なほど活気があった。ソファラは、イザーク戦争でのあの戦場の近くであり、人々の記憶にもそれは焼き付いている。そのため、どうも全体的に暗い印象があったのだが、今はむしろ雰囲気は明るい。 「統治者の力量か……? だが……」 記憶する限り、ソファラの領主ヨハルヴァは、スカサハやラクチェと同じ十四歳のはずだ。まだ少年と言ってもいい領主に、それほどの力量があるとは思えない。ただ。 「統治者に全体が感化されることは、あるかもしれないな」 噂に聞くヨハルヴァの性格が、ソファラに伝染したのであれば、あるいは賑やかな――ともすれば騒がしい街になるかもしれない。実際、どちらかというとそういう印象だ。 「どちらにしても、今日はソファラに滞在しよう。スカサハ、ラクチェ。あまり……」 言いかけて、すでに手後れであることをシャナンは知った。考えてみれば、十四歳といってもまだ子供だ。これだけ賑やかであれば、他のことに気を取られても無理はない。 「……なんてことだ。騒ぎになる前に見つけなければ」 スカサハはともかく、ラクチェはすぐ騒ぎを起こす。多分本人は認識していないのだろうが。スカサハが一緒にいるから、多分大丈夫だとは思うが、ここは敵地といっていい場所だ。最悪の事態すらありうるのだ。 「シャナン様」 押し殺した、他の者には聞こえないように窄めた声は、だがシャナンを凍り付かせた。シャナンの名が、現在行方不明とされているイザークの王子の名であることは、この地に住むものならば誰でも知っている。そして、イザークの民にとって、唯一の希望でもあるのだ。ただ、その存在は全くといっていいほど知られていない。そのはずだ。 「オーヴァ様の遣いです。スカサハ様とラクチェ様は、他の者が探してきますので、こちらへ」 シャナンはその緊張を、ほんの一瞬解いた。改めて男を観察する。ごく普通の街人の格好のイザーク人だ。 「急には信用できないかもしれませんが、オーヴァ様は今はこの街に住まわれています。どうか、こちらへ」 男はそういうと、そのまま背中を見せて歩き始める。やや逡巡したシャナンであるが、結局ついていくことにした。無闇に二人を探しても見つかるとも思えなかったし、なにより彼を信用する根拠もないが、疑う根拠もないのだ。 「随分賑わっているな。いつもか?」 道中、シャナンは男に尋ねた。まるきり信用したわけではないが、考えてみたら自分の名を知っている、ということはオーヴァの知り合いである可能性は高いのである。 無論、オーヴァがなんかしらの理由でで捕縛されて、手配が回っている可能性もあったが、今回シャナン達がオーヴァを訪れることは、連絡した記憶がない。だから、こうもタイミング良く自分達を見つけられたのには不信感を拭えないのだ。 「普段よりは少し賑やかかと。今は、イザークの領主であるヨハン王子がここに来ておりますので」 「なるほどな」 街のところどころに兵士が見られるのはそのためか。ただ、その割には何かを探しているようにも見える。 「なんでも、ヨハン王子とヨハルヴァ王子が、二人揃って城を抜け出してしまったらしく。まあヨハルヴァ王子はいつものことのようですけれども」 その声には、幾分かの好意的な響きが混じっているのを、シャナンは感じ取った。 ソファラの人々が、ヨハルヴァに対してグランベルの支配者、というものに対する憎しみ以上の好意を抱いているのが分かる。それは、シャナンの立場からすると歓迎せざる状態なのかもしれないが、それでも街の人々が日々に苦痛を感じずに暮らせる状態を維持していることには感謝したい。 直接会ったことはないが、敵にしたくはない、と思う。 「お待たせしました。こちらです」 男が案内した建物は、やや大き目の商館であった。 |
同時刻。スカサハとラクチェは、久しぶりの大きな街に浮かれきっていた。それでつい、シャナンから離れて歩き出していることに気がつかなかったのだが、それでも二人一緒というのは、やはり双子だからなのだろうか。 そして、気がついたときには、当然だがシャナンは近くにはいない。そうなると、急に不安になる。ただそれで、シャナンの名を叫ぶほどには、二人とも混乱はしていなかった。「シャナン」の名が持つ意味については、二人ともよく分かっている。 結局、二人ともシャナンが来てくれるまで待とう、と考えて目立つように街の中心部にある、広場の噴水ところで座っていることにした。ここならば、多分一度は探しに来てくれるだろう、と思ったのである。 時間的に夕方になっていて、道行く人々は、少し数が減っている。赤く染ままり始めた空が、寂寥感を感じさせて、二人は心細くなってきた。それでも、シャナンなら見つけてくれると信じて、待とうと決意したその時。 「あれ? ラクチェ……じゃねえか?」 だが、最初に声をかけてきたのは、シャナンではなかった。自分達と、同じ位の年齢の少年である。その横に、似たような顔の男がもう一人立っていた。雰囲気も似ている気がするから、兄弟だろうか。 「え……? 誰?」 すると、声をかけてきた方の少年は、もう一度確認するように、ラクチェの顔をまじまじと見る。 「やっぱりラクチェだろう。俺だよ。キエの街であった、ヨハルヴァだ。覚えて……ないか?」 その時のラクチェの表情を表現するなら、おそらく『目が点になった』が正しいだろう。 |