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「ふむ、思ったよりがんばるな。さすがに、このために何年も耐えてきた連中だけはあるか。まあこれくらいはしてもらわないとな」 男の目の前には数十のモニターに映し出される、タワー内部で繰り広げられる戦闘の様子が映っている。中には、監視カメラのないはずの場所の映像もある。 総じて、警備兵が押されている場所が多い。数こそ少ないが、侵入者は良く訓練されている。その練度には、正直賞賛を贈りたいほどだ。ただ同時に、クロリアの警備兵の不甲斐なさにも腹が立つ。 「これ以上はさすがに無意味だな。よし。もういいぞ」 男の言葉で、三人の少年が立ち上がった。いずれも、十五歳前後で、一人の前には監視装置に繋がる端末がある。 「B03、他の全員に私の意志を中継しろ。そのあとは、D04のビジョンを逐一転送。V01は休んでいろ」 それから男はいくつか消滅したモニターを見つめる。監視カメラの生きている場所以外の映像は全て消えていた。 「総員。侵入者を全て排除せよ。ただし、特殊能力者は可能な限り捕縛。ただし、捕縛が困難な場合は殺してもいい」 端から見ると、まるで独り言を言ったように見えるが、男はそれで満足したように再びいくつかだけ点いているモニターを見る。 男は端末(パネル)を操作して、消えたままの画面の一つを切り替えた。そこには、薄暗い室内で、寝台に座ってうずくまっている一人の女性が映し出されている。 「さて。君たちの感動の対面はあるのかな。私としても、それを演出してあげたい、と思う気持ちはあるのだけどね」 無論、その声はその人物には届いていなかった。 |
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状況が変わるのは、本当に一瞬だった。 沙耶達四人は、十人ほどの警備兵を相手に戦っていた。といっても、練度がまるで違うし、こちらには陣もいる。すぐに終わるだろうと思っていた。だが。 突然爆発が起きたかと思うと、沙耶の持っていた電磁誘導銃(レールガン)から弾が出なくなった。沙耶は反射的にそれを投げ捨てた。そうしなければ、沙耶の右腕は吹き飛んでいただろう。直後、砲身が爆発し、沙耶はその爆風に煽られる。銃身の途中で止められてしまった弾に、オート自動で連射された次の弾が激突したのだ。そして、その二発目の弾は炸裂弾だったのだ。 「沙耶ちゃん!」 マリアが驚いて沙耶の方に駆け寄ろうとした瞬間、彼女の体が浮きあがって凄まじい勢いで壁に叩きつけられた。マリアは血を吐いて崩れ落ちる。受け身は取ったようだが、果たしてどれほど効果があったのか疑わしい。 「マリア!」 シンは飛び出そうとしたが、その直後、危険を感じて反射的に高周波振動剣(ソニックブレード)を跳ね上げた。それに、何かがあたって両断され、その破片がシンの頬を切った。 「ニードル?」 シンが両断したのは、長さ十五センチくらいの細い針だった。沙耶はそれに見覚えがある。夢の中、いや、記憶の底にあったあの光景。その中で自分が使っていた武器。それとほとんど同じだ。 ゾクリ、という寒気がした。これは、恐怖だ。体が動かない。まるで呪縛されているようだ。だが同時にその恐怖の元を見たい、という欲求が、自分の中に湧き起こっている。 「沙耶、伏せろ!」 陣の声で、沙耶は一瞬呪縛から逃れた。いわれるままに伏せる。直後、沙耶の頭の会った場所をニードルが凄まじい速度で通過していた。 「ぼさっとするな、死ぬぞ!」 いいながら陣は警備兵のレールガンを煙の向こう側に連射している。だが、そこから聞こえる音は壁に着弾する音でもなければ、誰かに当たる音でもない。 まるで、弾丸が吸い込まれているような感じである。 「ち、やっぱり出てきたか」 陣はもう無駄と悟ったか、レールガンを投げ捨てた。直後、砲身がひしゃげてしまう。それで沙耶にもシンにも、何が現れたのか分かった。 そして、その予想した通りの存在が、彼らの前に現れた。傍目には、沙耶と同年代の少年にしか見えない二人。防弾装備も着けず、武器も持っているようには見えない。だが。 「侵入者ハ、排除スル」 無機質な、まるで機械が喋ったような印象すら受ける声である。だが、その後の攻撃は機械などより遥かに正確で、そして同じくらい無慈悲だった。 彼らの周囲にそれぞれ先ほどのニードルが十数本ほど浮いて、それが一気に、矢のように放たれる。沙耶はかろうじて避け、陣はサイコキネシスでニードルを弾いた。放たれる瞬間以外は特に「力」は作用していないのでそれほど難しくはない。だが、それで彼らに対抗できると思えるほど、陣は楽観していない。そして。沙耶ほどの反射神経を持っていなかったシンは、そのニードルの攻撃を避けきれていなかった。 「シンさん!」 突き刺さったニードルは三本。これでも、常人ならざる反射神経を持つ証拠だが、いずれもかなり深く突き刺さっている。 「沙耶、シン、避けろ!」 陣の声がしたとき、シンに駆け寄ろうとしていた沙耶は、完全に体勢が崩れてしまっていた。もう避けきれない。その時、沙耶はドン、と何かに突き飛ばされその弾道から外れた。そして一瞬前まで沙耶のいた場所には、当然沙耶を突き飛ばした者がいる。それはシンだった。 ドスドス、という肉に何かが突き刺さる嫌な音が連続的に聞こえた。何があったのかは、見るまでもない。 「逃……げろ、陣、沙耶。ここは、俺が…」 その直後、特殊能力者に対して、銃撃が浴びせられた。だが、彼らは気にした様子もない。全て、彼らの少し手前で弾かれてしまっているのだ。 「よくもシンを!」 いつのまに意識を取り戻したのか、マリアがレールガンを斉射している。だが、突然彼女はその攻撃を止めてしまった。 「ま、まさか、クイン……?」 マリアの表情は、驚愕と絶望、そしてかすかな喜びの入り混じった表情に変わっていた。 クインの名は、沙耶も覚えている。マリアとシンの年の離れた弟。特殊能力者であったが故に、クロリアに連れて行かれたという話であった。まさかこんなところで再会するとは。ありえる話といっても、あまりにも残酷すぎる再会である。 「クイン、私だ。マリアだ。お前の姉の。覚えてないのか?」 直後、沙耶は反射的にマリアを庇うようにして押し倒した。さっきまでマリアの頭があった位置を、ニードルが凄まじい速度で通過し、壁に突き刺さる。 「無駄です。今の彼らは、完全に精神をコントロールされている。かつての私のように。だから……」 それは、あまりにも残酷な宣告だ。だが、ここで殺されるわけにはいかないのだ。しかし、マリアは沙耶を押しのけた。 「そんなはずないよ。クインが、私達を忘れるなんて。そんな……」 「侵入者ハ、排除スル」 その言葉は、間違いなく彼らがクインと呼んだ人物から発せられている。そして再び、今度は二十本近いニードルが少年二人の周りに浮きあがった。彼らの表情には、躊躇いもなければ親愛の情もない。ただ、与えられた任務をこなすだけの、機械としての顔が、そこにある。 「……そうか。いや、覚悟していたはずなのにね。取り乱しちゃったよ」 奇妙なほど落ち着き払って、マリアは銃を持ち直した。同時に通常のトリガーとは違うところのトリガーを引いた。それは、マリアの銃にだけついていたグレネードランチャー発射用の砲身のトリガーだ。だが、中に入っているのは通常のグレネードではなく、煙幕弾。さすがの能力者二人も、この猛煙では能力は正確に使えない。特殊能力は、基本的に操る対象が見えなければ何も出来ないのだ。通路が煙に満たされ、お互いの姿が見えなくなった。 「沙耶ちゃん、陣。ここは行って。シン、まだ生きてるね。ここは食い止めるよ」 「おう。弟の不始末だ。俺達がしなきゃなあ。兄貴として格好がつかねえよ」 シンはそういうと、武器を持ち直した。銃はもうないが、ソニックブレードはまだ健在だ。 「待て、あんたら死ぬ気だな。無茶だ。あんた達が命を張ったところで、奇跡でも起きない限り奴等は止められない。それより、今のうちに……」 陣の言葉に、マリアは自分の足を指す。沙耶はそれを見て、思わずひっ、と悲鳴をあげた。彼女の左足は、完全に折れて、しかもその骨が外に飛び出しかけていたのだ。彼女の意識があること自体が、すでに奇跡だ。 「どの道、あたし達はこの傷じゃもう長くない。だから行って。あなた達なら、もっと先に行けるはず。そしていつか必ずあたし達の願いを叶えて」 そう言っている間に、煙幕がどんどん薄くなっていく。だが、沙耶はそれでもなお動こうとしなかった。 「すまない。マリア、シン」 陣はいきなりそういうと、足元に転がっていたレールガンを拾い上げ、沙耶の手を引いて走り出した。沙耶は抵抗しようとしたのだが、足が地に付いていない。陣によって浮かされているようだ。 「離して、マリアさんが、シンさんが!」 そう言っても無駄なことは、沙耶にも良く分かっていた。だが言わずにはいられなかったのだ。 数瞬後。凄まじい爆発と共に、相当離れていたはずの沙耶達のところまで振動が伝わってきた。何があったかは、考えるまでもなかった。 |
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「報告します。B01、及びB07は重傷を負いました。行動不能のため、回収の必要を認めます」 男はその報告を受けたとき、少なからず不快感を顔に出した。だが、報告した側は全く気にした様子はない。 その反応のなさに、男はいささか面白くなさそうな表情をしたが、そうしたのは自分である。 「仕方あるまい。その二人は近くにいる奴等に回収させろ。その方が早い。その他の状況はどうか」 「現在、二十ヶ所で戦端が開かれています。また、未だに戦闘していない侵入者もあり、これがメインゲートに迫っています。現在、これにはD07とF02が向かっています。あとは、いずれも時間の問題です。B01及びB07に重傷を負わせた相手については、現在探索中です。どうやら能力者が同行しているらしく、こちらのドロービジョンに対して、シールドを張っている模様です」 男は怪訝な表情をした。 「直前までは追えたのだろう?ふむ。途中から見通されていることに気が付いたのか?まあいい」 男はそれだけ言うとそのオペレーターを下がらせた。そして、再び壁一面にあるモニターを見る。 「さて、思ったより本当にがんばるようだが、そろそろご退場いただこうか。最後の役目を果たしてもらってからね」 そういって男は、一部の隔壁の閉鎖を指示する。モニターに映し出された侵入者が、隔壁に阻まれてある一ヶ所へと誘導される。そしてそこは、モニター上では模擬戦闘空間(シミュレーションホール)という文字が明滅していた。 「お歴々相手にせいぜい派手に演出してやるとしようじゃないか」 その笑みは、残忍、という言葉では到底足りないほどの邪悪さを秘めていた。 |
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沙耶と陣は二人並んで走っていた。 「俺を殴りたいなら、構わない。だがな」 「言わないで」 沙耶は肩を震わせながら呟いた。 「分かってる。分かってるから悔しいの。もしかしたら、私が『力』を使えたら、彼らを助けられたかもしれないって。そう思えてしまう。それが悔しいし、悲しい。マリアさんやシンさんを殺したのは、私みたいな……」 パチッ、という乾いた音が響いた。沙耶は自分の頬を叩かれたのだということに、一瞬気が付かなかった。その後で、その少し赤くなった頬を呆然と抑える。 「自惚れるな。沙耶が『力』を使えたところで、どうしようもなかった可能性の方が高いんだ。第一、それなら俺の方にこそ責任がある。彼らに対応すべく、いままで訓練を受けていたはずなのに実際はどうだ。自分の身を守るのが精一杯だ」 沙耶はその時になって、初めて陣が、ものすごく辛そうな顔をしているのに気が付いた。確かにそうだ。彼の方がもっともっと悔しかったに違いない。 「ごめんなさい。私だけ取り乱して」 「いや、すまなかった。……それにしても静かだな。とりあえず下りたから、もう相当下層まで来ているはずなんだが」 確かに奇妙なほど静まり返っている。耳を澄ますと、かすかに爆発音や銃声が聞こえるから、まだみんな戦っているんだ、というのは分かる。 「先に進みましょう。私達は立ち止まるわけにはいかないのだから」 沙耶が歩き出すと陣は慌てて続いた。 「いきなり強くなったな」 その言葉に、沙耶は首を振る。 「違うの。歩いてないと、進まないと潰されそうだから。それに陣さんが一緒で良かった。私一人じゃただ泣いているだけだったと思います」 「それは俺も同じだ」 沙耶の頭に陣の手が乗った。なぜか、彼と触れ合っていると少しだけ落ち着く。 「沙耶がいるから、なんとなく安心できる。やるべき事を見失わずにすんでいる。……しかし見事なほどデータを取れる端末がないな。まあこれだけ敵に時間を与えてしまっている、ということはあるいはもうデータの奪取は不可能かもしれないな。だが、沙耶の目的はまだだろう?」 沙羅を助け出す、という目的。せめて、その居場所だけでも突き止めたいのだ。 沙耶は近くに沙羅がいるという半ば確信めいた予感がしていた。根拠は全くない。ただそう言う風に感じる、としか言えないのだが。 「それでいいさ。少なくとも、手がかりくらいはあるだろう。とりあえず沙羅という人を助けよう」 陣はレールガンを沙耶に渡した。弾は、まだ十分に残っている。とりあえず普通の相手ならどうにかなるだろう。 「ごめんなさい。本来の目的と違うのに」 「いや。それに上手くいけばどっかデータの残っている端末が見付かるかもしれないし。物事、あんまりマイナスに考えないほうがいい。沙羅という人にだってきっと会えるさ」 陣の言葉は、今の沙耶には嬉しかった。 |
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阿鼻叫喚の地獄絵図。それが、そこにあった。 閃光が走り、銀の雨が降り注ぐ。そして、その度に紅の雨が降った。絶望の叫びと、そしてこれを演出したものへの怨詛が空間に満ちている。だが、それらもまた、容赦のない力の前に潰されていった。 それらを見下ろす場所で、男は高らかにその力の程と、その可能性について語る。 圧倒的な力を人が手にした時、人はその力に酔うという。 そして今、男の話を聞いていた者達は、確かに酔っていた。 力と血、そしてそれが導く、輝かしい未来というなの美酒に。それを醸造した者が、何者であるかを考えもせずに。 |
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「え……?」 走っていた沙耶が、突然立ち止まった。陣が何事かと思って戻ってくる。 「どうした?」 「誰かに呼ばれたような気がするの。すぐ近く。声とかじゃないのだけど」 周囲を見渡してみる。だが、扉などまったくない通路である。 「気のせい……いや、違うな。下がっていろ、沙耶」 陣が突然力を集中させた。沙耶には見えない力が、壁をえぐっていく。ベキベキと金属とコンクリートが悲鳴をあげて壁に完全に穴があいた。その向こう側は、部屋になっている。しかし、明かりなどはついていない。 「誰……」 その中からの声を聞いたときに、沙耶は自分の耳を一瞬疑った。聞き間違え様のない声。懐かしい沙羅の声。 「沙羅!」 沙耶は部屋に飛び込んでいた。真っ暗だが、沙羅のいる場所だけははっきりと分かる。 「沙耶。本当にあなたなの?」 沙羅のほうも、ひどく驚いている。 「沙羅、本当に沙羅よね。良かった、無事で。本当に良かった。私とっても心配していたの。とっても、とっても会いたかった」 「ほら、泣かないの、沙耶」 沙羅は泣きじゃくる沙耶を抱きしめた。その後で、沙耶の後ろにいる人物に目をやる。 「沙耶を助けてくださって、ありがとうございます。失礼ですけど、あなたは……?」 沙耶を抱きしめたまま、沙羅は陣の方に訊ねた。訊ねられた陣のほうは、沙羅を見て驚いていた。似ている、とは聞いていたが、ここまでそっくりだとは思わなかったのである。多少雰囲気が違うが、顔はほぼ同じだ。 「っと、失礼。私は蓮条陣といいます。彼女の仲間というか……」 どう説明すればいいのか、と陣が考えをめぐらせようとしたところで、突然さらに別の人間の気配が部屋の入り口に生じた。沙耶と陣は驚いて振り返る。 「ふむ。私が演出するまでもなく、感動の対面は果たしてくれたのか。なかなか優秀じゃないか、君達は」 立っていたのは、傭兵や警備兵には見えなかった。白衣をまとい、まるで研究者のようである。だがなぜか、二人はその男に気圧されていた。 「沙耶には指一本触れさせないわよ」 いつのまにか沙羅が二人と男の間に立ち塞がっていた。だが、男は気にした様子もない。 「健気だな。いや、これこそ愛と呼ぶべきか。だが、私としても貴重なサンプルを逃がすつもりはないのでね。悪いが、ここで捕らえさせてもらうよ」 男の言葉と同時に、彼の脇から四人の少年少女が現れた。いずれも、まず間違いなく特殊能力者だ。 「彼ら相手に逃げ切れるかね。無理は止めたまえ。ああそうそう。君達の仲間は、すでに全滅したよ」 その言葉に、沙耶と陣は慄然とした。いくら敵に能力者がいるとはいえ、こちらにもいたはずだ。にも関わらず、全滅したというのか。 脅しだ、と思いたかった。だが、男から感じられる無言の威圧感は、それが虚偽だと言わせないものがある。あるいはそれは、男の両脇にいる者達のプレッシャーだったのかもしれない。 どうしようもない。陣にはそれがはっきりわかった。彼らは、いずれも自分と同等かそれ以上の『力』の使い手だ。なんとなくだが、それがわかる。彼らを振り切って、しかも特殊能力の使えない沙耶を連れて逃げるなど不可能だ。 「……そうね。私は逃げ切れないわね」 沙羅が突然口を開いた。 「確かに、私はどうしようもない」 そう言いつつ、沙羅の声にはあきらめた者が持つ絶望感が感じられない。だが男は、その返事で満足したようだ。 「あきらめのいいことだ。これで余計な手間をかけないで……」 男が言いかけたとき、沙羅の全身が光に包まれた。陣には分かる。それは、すさまじいエネルギーを伴う『力』の発動の前兆だ。 「けど、彼らを捕らえさせはしない!」 「しまった!」 男が初めて狼狽した声を出す。 男の声と同時に、沙耶と陣の視界が光で満たされた。金の闇に視界が覆われ、何も見えなくなる。 「沙羅!」 沙耶の声が響く。 「生きて、沙耶。私の愛しい……」 沙羅の声は、聞こえなくなっていた。 体が宙に浮いている。何も見えないが、なぜかそんな感覚がする。 どのくらいの時が経ったか、あるいは一瞬しか経っていないのか、それはわからない。 その感覚が突然消えうせ、どこかから落ちる、と思ったとき、沙耶は気を失っていた。 |